ビジネスでのデザインの具体的な役割の歴史的な変化
- 大島 創
第2次世界大戦後の15年間に、米国は驚異的な経済成長を遂げ、世界で最も豊かな国としての地位を固めた。
(中略)
郊外が発展するにつれて、事業も新しい地域へ進出していった。さまざまな店舗の入った大規模なショッピング・センターが、消費者の購買パターンを変えた。このようなショッピング・センターの数は、第2次大戦末にはわずか8カ所であったが、1960年には3840 カ所に増えていた。
(中略)
テレビも、社会的・経済的パターンに強力な影響を及ぼした。テレビは1930年代に開発されていたが、広く販売されるようになったのは戦後になってからであった。1946年には、全米のテレビ普及台数は1万7000台未満であった。しかし3年後には、毎月25万台のテレビが購入されており、1960年までには、全米の家庭の4分の3が、少なくとも1台のテレビを所有していた。
(中略)
そしてあらゆる年齢層の米国民を対象に、洗練されたコマーシャルが作られ、幸せな生活のために必要だとされる製品を宣伝した。United States Department of State
『米国の歴史の概要 – 戦後の米国』(米国大使館)
この時代におけるビジネスでのデザインの役割は大きく2つ、
- 工業製品がより売れるように、モノのかたちをデザインする(インダストリアルデザイン:工業デザイン、プロダクトデザイン)
- 工業製品がより売れるように、広告をデザインする(グラフィックデザイン)
でした。
例えば車のデザインでは、テールフィンという表現が流行りましたが、実は機能的には意味があるわけではなく、消費者が好んだ=売れたから、というのが理由でした。
製品が売れるための工業デザイン(プロダクトデザイン)が大きく変化したのは1970年代後半から80年代にかけて、やはりアメリカにおいてでした。シリコンバレーとパーソナルコンピュータの誕生です。
もう少し具体的には、デザインの対象が消費者からユーザーに推移したことに伴う変化でした。それまでは消費者に売れるために外観のかたちを考えることが主にデザインでしたが、コンピュータは実際に機能を果たすためにユーザーに取って使い方が理解でき、より使いやすいことが必要になります。
それまでも計測機器やオーディオ機器、家電などで使い勝手が考慮されることはありましたが、画面の中を含むより複雑な操作を専門家や好事家ではない一般の人間にさせるという新たな課題は、デザインの役割を外観や広告のレベルからより本質的な人間の「行動」に関する部分まで拡張されることに繋がりました。
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